箱蹴り職人の現状(2015年)

最近、NTT-X Storeで、箱蹴り職人の足による商品数が激減しているような気がします。
何か原因があるのか、自分なりに調べてみました。

 

箱蹴り職人の必要性

家電量販店とメーカーの友好な関係を築くためにも職人は重要は存在となっています。
詳細については、以前の記事を参照。

箱蹴り職人とは - ukkiのブログ

 

箱汚れと箱破損の違い

商品紹介のページに「箱汚れ」と「箱破損」と2つの言葉がありますが、これは明確な違いがあります。

 

「箱汚れ」は2種類あります。
1つは、荷物の運搬中に荷崩れを起こした際に土によって汚れたものなど、何らかの理由で汚れたものになります。
もう1つは、運搬中に荷崩れを起こし、汚れてはいないが潰れてしまったもの。
潰れてしまったものなので扱いとしては「箱破損」になるのが通常ですが、箱蹴り協会より、箱蹴り職人によるものと、そうでないものは分けて欲しいという要望で「箱汚れ」商品に含まれるようになりました。

 

「箱破損」、これが箱蹴り職人によるものです。

 

本来は3種類に分けられるべきではあるのですが、公には、意図的に傷をつけた商品が作られているという事実はないことになっているため、現時点でもこの2種類になっています。
そのため商品としては「箱蹴り」ではなく「箱破損」として扱われています。

 

我々消費者が箱蹴り職人の商品を選ぶ場合は「箱破損」のものを購入しておけば良いことになります。

 

箱の角が潰れているものは、間違いなく箱破損(箱蹴り職人作成のものではない)です。
角が潰れると箱の強度が不足するため、職人は絶対に角には傷を付けません。

 

擦り(こすり)

「箱蹴り」と混在されることがあるものとして「擦り」商品というものがあります。
これは、楽天エレコムわけありショップなどで、よく見かけます。
梱包がプラスチックの商品に多く、梱包しているプラスチック同士を擦り合わせて商品に傷をつける技法のことです。

 

主婦の内職として人気が非常に高いようです。
商品に傷をつける際に手元をみなくても出来ることから、好きなテレビドラマを見ながら小遣い稼ぎができるということで、一度内職を始めると辞める人がほとんどいないため、この10年間、求人募集が行われたことがありません。
ごく一部ですが、月20万稼ぐ人もいるようです。

 

フィギュアの謎

現在も理由は分かっていませんが、フィギュア商品に関するクレームが他の商品に比べて非常に高いようです。
クレームの内容としては、「コレクションなので、くぁwせdrftgyふじこlp」等、意味不明の内容を捲し立てた後に、一方的に電話を切るため、会話が成立せず、クレームの内容が不明で、対策を立てれないが現状です。

 

クレームを少しでも減らす目的で、傷を付ける場所はダンボールの間の波の部分をハサミやカッターで切り、外見からは一切傷があることがわからないように、言い訳程度の傷をつけることになっています。

 

「波切り」という手法です。

 

それでも、クレームの数は減ってはいません。

 

クレームは多いですが、一人で大量に購入したり、売れ行きは好調なので、メーカーにとってはありがたい商品となっています。
通常、大量に購入した場合は、誤発注の可能性を考慮して購入者に対して事前確認をするのですが、確認時にも意味の分からないことを言われることが多く、確認をしないで発送することが慣例となっています。

 

傷をつけるのは箱蹴り職人ではなく、内職として主婦に人気があります。
「擦り」より単価が高いことが「波切り」の人気の秘密のようです。
「擦り」と掛け持ちで内職を行っている人も多いようです。

 

職人の条件

以前は特別な条件は何もありませんでしたが、利き足のみを利用することが多く、左右の足の太さや長さが異なることで、歩行困難になるという職業病がありました。
2012年より、左右の足に万歩計の装着が義務化され、1か月間で歩数の差が5%未満になることが条件となっています。
年配の職人の中には、このことを嫌い、一日ごとに万歩計を左右逆に取り付けて、利き足のみで作業する人もいるようですが、箱蹴り協会は見て見ぬ振りをしているのが実状のようです。

 

死亡事故

高齢の独り身の方は、作業場(ほとんどが大きな倉庫)で寝泊まりをすることが多かったようです。
1998年1月に、作業場で凍死するという事故があったため、現在では作業場での寝泊まりは禁止されています。
この事故が起こってからは、箱蹴り協会では、職人全員に住まいを用意するようになりました。
作業場近くで光熱費込で月額一律5千円と破格の条件のため、職人に非常に喜ばれているようです。
この金額は1998年以降、一度も価格改定が行われていません。
若手の中には、1年中24時間エアコンをつけたままのものも出てきており、光熱費については、限度額を設ける案が出てきています。

 

職人の減少

職人の高齢化により、日々減少傾向にあるようです。
1998年の死亡事故以来、勤務中の死亡事故は一件も起きていませんが、引退により減少傾向に変わりはありません。
公にされていないため、求人募集が行われることもなく、新たな若手が不足しているのが現状です。

 

伝説の職人

伝説の職人と呼ばれる、箱田 蹴雄(ハコタ ケリオ)さんが、2012年に引退されました。
引退した時の年齢は87歳で、現役職人の年齢としては、2015年現在も87歳のままです。
引退する際に、協会より、若手育成を行って欲しいということで、月給100万、ボーナスを年2回それぞれ150万、若手が1年以上勤続した場合は一人あたり20万という破格の申し出がありましたが、断ったそうです。
理由としては、ひ孫と遊ぶのが楽しくなったためということでしたが、これは嘘であることは容易に推測が出来ます。
おそらく体力の限界を感じて辞められたのだと思います。
職人なのでプライドは高く、自ら引退を選んだものと思われます。

 

2014年、布団の中で笑顔で亡くなっていたそうです。
その時に着ていた寝間着は、2014年の誕生日に、手芸が得意な、ひ孫からプレゼントされたものだそうです。
ダンボーの刺繍が胸に大きく描かれていたそうです。
とても気に入っていたようで、同居の孫の嫁が洗濯しようとする度に、着れなくなるから洗うなと怒られていたそうです。
普段は電話に出ることも掛けることもしなかったそうですが、ひ孫に2着目も欲しいと電話でお願いしていたそうです。

 

葬儀の際は、経帷子,着物,スーツに着替えることを提案されましたが、遺族の強い希望(特にひ孫)により、寝間着のまま葬儀が行われました。
2着目の寝間着は、仏壇の横の壁に掛けられているそうです。

 

850万円事件?

箱田 蹴雄さんが亡くなられた1週間後に、高齢の男性が立て続けに8人、「お線香をあげさせてください」と訪れてきました。
最後の一人が、風呂敷包みのまま、お供え物をされて帰られたそうです。
翌日、同居の孫の嫁が中身を確認すると、使い古された1万円札が、100枚の束が8つと、50枚の束が1つ、いずれも輪ゴムで止められていたそうです。
あまりにも高額だっため、警察を呼び、警官立ち合いのもの銀行で確認を行ったところ、すべて本物。
事件性はないということで、警官はそのまま帰ったそうです。
翌日、親族13名が集まり、家族会議が行われましたが、持ってきた作業服の男性に返すということで全員一致しました。
本人の顔を確認しているのは、孫の嫁、ただ一人であり、遺品整理時に見つかった20~30年前の写真に写っている男性達に非常に似ているが、確証は持てないとのこと。
なぜ、直ぐに確認しなかったんだと、親族からかなり責められたようです。
このままでは男性も見つからないないだろうということで、同居していた孫が取りあえず預かり、1年間見つからなかった場合は、ひ孫全員の教育費として均等に分けることになったそうです。

 

伝説の職人の技

通常の作業は、一人が一つの作業場で仕事を行うのですが、納期の関係で稀に2~3人で行うこともあるそうです。
2人で行えば作業効率は2倍になる筈ですが、何故か1.3倍前後の作業効率にしかならないそうです。
人前では見せない、職人ごとの技があるようです。
人前ではその技を使わないため、効率が悪くなるのではないかと思います。

 

箱田 蹴雄さんの技で、空中4段蹴りという技があるそうです。
80歳頃に聞いた話で、商品を縦に2段積んでおいて、飛び上がった時点で左右の足で2個、降りてきている間に2個、一度のジャンプで4個の商品を作るというものだそうです。
おそらく、これは聞き間違いだと思います。
80歳という高齢でそのようなことが出来るとは思えませんし、仮に出来たとしても均等に満足できるような傷をつけることは出来ないと思います。
事実としては、一度の移動で、4個の商品に傷をつけるようにして、出来るだけ体の移動回数を減らすというのが真実と思われます。

 

一日で100tの箱蹴り商品を作り出したという伝説がありますが、これも嘘だと思います。
仮に1kの商品を1秒で傷をつけるとしても、一日8時間で、1*60*60*8/1000=28.8tです。
そもそも商品の数を個数ではなくトンという重さで表現していること自体、おかしな話です。

 

職人魂?

箱蹴りの商品を作る際は、商品によって異なりますが、壊れてもよい数として0.3%~1%未満程度という指示が多いようです。
職人の多くは、例え商品が壊れなくても出来た傷に満足できなければ、商品自体を箱ごと、ハンマーで粉砕してしまいます。
そのため、商品の大きさごとに3~5個のハンマーを用意しているようです。 

 

高額商品であっても何の躊躇もなく破壊してしまうため、メーカーの担当者にとっては、衝撃のシーンのようです。
現在は、メーカーの担当者は、作業場の外までしか荷物を運ばないことが慣例になっているようです。

 

伝説の職人の後継者?

同居していたひ孫に、庭でサッカーを教えている姿がよく見かけられたそうです。
3歳の頃からサッカーをはじめていたそうです。
よく「左足も使え!」という声が聞こえてきたそうです。

 

中学校2年生の時に、前キャプテンとメンバー全員からの強い推薦で、異例ではありますが、2年生と3年生の時にキャプテンを務めていたそうです。
高校2年生の時のテレビインタビューで、将来の夢を聞かれて、「サッカー選手ともう一つあります」と答えたそうですが、もう一つについては具体的には答えていないようです。
現在は高校3年生で、大学やプロチームからも声をかけられているようです。
キック力が特に優れているわけではなく、抜群のコントロール力を買われているようです。

 

映像としては残っていないようですが、高校2年生の時に、20m離れたゴールポスト上にある空き缶8つを、右足で4個、左足で4個、連続で落としたそうです。

 

ダン位認定

実務経験1年以上(1年間を通して200日以上)の人を対象に、ダン位認定が行われているようです。
段位ではなく、一部カタカナで「ダン位」と表現するのが正しいようです。
初ダン~七ダンまであるようです。
筆記はなく、すべて実技のようです。

 

初ダンは非常に簡単で、10個の商品に中身を破損することなく外箱にのみ目視で確認可能な傷をつけることという条件のようです。(10個中8個が無事であればよい)
傷をつける方法は手や道具を使ってもよく、カッターも用意されているようです。
ほとんどの人がカッターを使い、この試験で過去に落ちた人は誰もいないようです。

 

七ダンは、商品名等一切入っていないダンボール5個の中に入った商品名を4個以上あてるというものです。(ダンボールは手で触れてもよい)

 

ダン位認定書は、通常のカードサイズ(免許証等と同じ)で、以前はすべて手書きで行われていました。
ダンの記載はダンの数と同じ数だけ□の絵を描いた横に小さく漢数字を書いていたそうです。
□の絵の配置場所には明確な規定もありませんでした。
そのため、ダンの読み間違えなどもあったと推測されます。
現在は、名前以外の部分は事前に印刷が行われています。何ダンであるかは大きく漢数字のみで表現されています。
試験当日に、初段の人には、協会職員が手書きで名前を記入、二ダン以上の人は、書道の有段者によって記入が行われます。

 

書道の有段者には、手当として協会より交通費込みで一律4万円が支払われます。(合格者の有無に関わらず)
合格者が居なかった日は、交通費を含めて受け取りを拒否をする人が多く、中にはトイレに行くと言って、そのまま帰ってしまう方もいるようです。
事前に金融機関に振り込む案も出ているのですが、当日手渡しを条件にされることが多く、悩みの種になっているようです。

 

勤務中に認定書の保持や提示の義務がないため、認定書を持ち歩かない人がほとんどのようです。
ダン位による給料の差はなく、名誉的な意味合いが強いようです。

 

30年程前に、箱田 蹴雄さんが七ダンの認定書を持っているのを見たという人が一人いるのですが、当時は手書きの認定書だったため、読み間違いか、本人が悪戯で□の絵を1個付け足しただけだろうということになっています。
七ダンは、現実離れしていて、合格は無理と言われています。
この10年、誰も挑戦した人はいないそうです。

 

不明事項が多いのが原因?

新しい若手の職人が増えない理由としては、職人の存在が公になっていないことと、不明なことが多いことが原因と思われます。

 

箱蹴り協会の所在地:不明
ダン位認定試験会場及び日時:不明
箱蹴り職人ダン位認定者数:不明
主な就職先:不明

 

間違いない事実

これまで、「~のようです」や「思われます」のように書いてきましたが、一つだけはっきりと言えることがあります。
それは、NTT-X Storeの箱汚れ特価コーナー(箱汚れと箱破損の取り扱い)で、普通は見逃しそうな程度の傷が外箱についている「RN10400-100AJS」を購入して、今も壊れることなく稼働しているという事実!

 

名目としては、箱破損という名前ですが、通常商品より安く販売されているものがあることに間違いはありません。

f:id:ukki0309:20131205005659j:plain

 

今後に臨むもの

箱蹴り職人が増え、箱破損商品が増えることを望みます。

 

今後も、NTT-X Storeで「箱破損」が扱われ続けますように。

 


このページには一部(もしくは全てにおいて)フィクションが含まれているかもしれません。